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「その日の前に」重松清/「いのち」の周りのストーリー

その日のまえに (文春文庫)

 

こんにちは。Cedar(シダー)です。

 

先日、電子書籍Kindleの記事を書きました。

www.studiocedar.life

 

電子書籍はどこでもスマホやKindleがあれば簡単に読書体験ができるので、読書好きの人には必須のアイテムです。

今回は、そんな私のKindleの中でももっとも読まれている作品「その日のまえに」の解説を行います。

 

 

の日のまえに とは

その日のまえに (文春文庫)

その日のまえに (文春文庫)

 

 

重松清さんによる短編小説です。

これまでに、2007年ラジオドラマ化、2008年映画化、2014年テレビドラマ化されている人気作品です。

 

この作品は命について書かれています。

ただし他と違うのは、命が尽きた後のストーリーも描かれていること。

逝く人と残される人を描いていますが、どちらかというと残された人を中心に描かれている印象です。

 

「悲しい」の感情だけでない、より現実に近い感情を描いた作品となっています。

 

 

大切な人たちとの別れは誰にでも起こりうるものです。

永遠の別れとなりますが、残された人たちは一人になりながらもこれからの生を全うしなければいけません。

ただ悲しむだけではなく、現実ではそれらを乗り越えていく必要があります。

私も祖母を亡くしています。

もう会えなくなる悲しみと同時に、彼女が持っていた少女時代の記憶や思い出がこの世からなくなってしまうことにさみしさや切なさを感じました。

命を全うして亡くなった祖母のような高齢者であれば、残された家族も心の整理がつくのかもしれませんが、妻と子を残して25歳で亡くなったいとこのお葬式では涙が止まらなかったことを覚えています。

それでも残された家族は元気に生活していますし、今では笑いの絶えない家族になっています。

ある意味それが現実ではあり、映画の中で描かれるきれいごとだけでなありません。

この小説「その日のまえに」では、それらの現実的な気持ちの葛藤が描かれており、読む人の心をより直接に揺さぶってくる名作だと思います。

 

ぜひみなさんも一度読まれることをお勧めします。

 

 

ここからネタバレ

 

こうき雲

 

主人公が妻の祖母が入所している介護施設へ向かう途中、空に浮かぶ飛行機雲を見て、自身の小学生時代に病気で入院していたガンリュウという少女のことを思い出す。クラスメートみんなから嫌われていたガンリュ。

ガンリュウのお見舞いに行った主人公は…

 

物語の最終盤にもつながるストーリーです。

子どもが、命の問題に直面したときに考える直接的な感情が与える残酷さと、それを後悔し続けている父親の心の感情が描かれています。

私の祖母と同じようにもうすぐ命の灯火が消えるであろう人との付き合い方も考えさせられます。

 

日のあたる家

 

8年前に夫を亡くした主人公。

娘とふたり暮らしの中、朝のジョギング中に元教え子と出会う…

 

このストーリーは本の中で最も特徴的で異質な物語。

若い二人の未来が朝焼けとともに表現されています。

 

 

余命3ヶ月を宣告された主人公。

呆然としてままその足は自然と少年時代に過ごした街へ。

そこで出会った当時の友人とともに、少年時代に海で行方不明になった友人を思い出す…

 

主人公と年齢も近いことから最も共感できるストーリーです。

命の終焉に直面した本人の心の葛藤が描かれています。

ここで登場する海岸で開催される花火大会は終盤の大切な要素となります。

 

ア・カムズ・ザ・サン

 

保険外交員の母と反抗期の中学生の母子家庭。

母がストリートミュージシャンにハマったことを知る。

その訳を探っていくうちに母が肺がんの可能性があることを知る息子…

 

 癌宣告をされた母親が一人息子へ心配させないために、一人で心の整理をつけるためにストリートミュージシャンに没頭していく物語。

このストーリーも終盤に続いていきます。

 

 

の日のまえに

 

とある夫婦は新婚時代に住んだ街を目指す。

妻は余命宣告をされる中、どうしても昔住んだ街を見たいとねだり、医師に無理を言って電車で出かける。

そこで見たのは昔と変わった小さな町の風景。

「その日」を迎えるために、これまでの過去を振り返る二人の物語。

 

 

の日

 

いよいよ妻の命の灯火が消えかかる「その日」。

その日を迎えた家族の心の葛藤を描く物語。

 

の日のあとで

 

妻が亡くなった「その日」の後。

妻宛のダイレクトメールが妻がこの世に生きていたことを示す記憶であることを知る。

残された家族は何を思い、どう生きていくのか。

これまでの短編小説の主人公も登場しながら、私たちの生と死、そして心のありよう描きます。

 

後に

 

私は初読を山手線の中だったのですが涙が止まらなくて大変でした。

電車の中で読書しながら笑っている人もたまにいますが、涙をボロボロ流しながら読書しているおっさんも異様だったと思います。

 

でも涙をどうしても止めることができませんでした。

 

今では心が荒んで疲れているときに意識して読むようにしています。

 

自分が今生きていること、生かされていることが当たり前じゃなく感謝することで、心が少し雨向きになることができます。

 

これからもなんども読み返す作品になるでしょう。

 

みなさんもぜひ一度手にとって読んでみてくださいね!